2019年に読んだ本は55冊でした。
週に1冊は読んだ計算になりますね。
出張が多かったので移動時間でけっこう読むことができたのだと思われます。
ざっと振り返ってみると、シリーズものが多かったです。
個人的には長編ものが好きで、いつ終わるとも知れない物語にずっと心を委ねていたいタイプの人間なのであります。
そいういった意味において、一昨年から読み始めた「天冥の標/
小川一水」シリーズが完結してしまったのが、ちょっと寂しくもあります。
そっか、完結編が発売されたのがちょうど一年ぐらい前だったんですね。
時間が経つのは早いものです。
とりあえず、いっぺんに紹介すると長くなるので小分けにしてアップします。
◆「オーデュボンの祈り」/伊坂幸太郎
江戸時代から外界と遮断されている孤島「荻島」を舞台にした不思議な物語。未来を予見する喋る案山子が殺されるというミステリーですが、全編に漂う独特の空気感と見えない結末に引きずり込まれ一気に読んでしまいました。あと、これが伊坂氏のデビュー作というのも知らなかったです。果たしてこれはミステリーなのかファンタジーなのか悩むところではありますが、きちんと伏線を回収しているところはさすがといった印象です。
いつも思うのは、なぜ自分は東京の下町に生まれ住んでいなかったのだろうという嘆きながら生きており、泉麻人氏のような人を常にうらやんでおりました。
特に1980年代の東京を日常生活において体感したかった自分は、こうした本を読むことで疑似体験し留飲を下げているのであります。
必ず二回読みたくなるミステリーとして絶賛されていた小説ですが、くろばこは今頃になって読んだ次第です。基本的に直近のベストセラーとか、今一番売れてますって宣伝されている本にはかなり消極的で、ほぼ買うことがないです。この本も当時はそういう触れ込みだったので、手を出さなかったんですよね。で、感想はというと、読み返しはしませんでしたが、ちょっとページをパラパラと戻ってみて「あ~、こういうことね」って感じでした。なぜ舞台設定が1980年代だったのかはわかりませんが、自分の学生時代を思い出して懐かしい感覚で読み進めることができました。ただ、読者のミ
スリードを前提としたミステリーとなっていて、その点はちょっと釈然としない読後感が残りましたね。
冲方氏の
ファンタジー小説は、どうも自分に合っているらしく、これも非常に面白く読めました。設定された世界観がしっかりしているし、各種族や登場人物のキャラもしっかり立っています。描写も細かく緻密なので入り込むまではややハードルがあると思いますが、浸ってしまえば続きが気になってしょうがないという中毒性があります。世界において唯一の少女ベルの冒険物語です。
話しの流れとしては、マルドゥック・スクランブルの続きにあたる物語。発売の順序でいくと、マルドゥック・ヴェロシティの後に出版されておりますが、くろばこはスクランブルの続きが読みたかったので先にこちらから読み始めした。金色の鼠ウフコックがメインで描かれていますが、強力で魅力的な敵の登場、そしてそのバトルシーンなどが非常に上手く描かれており、読みだしたら本当に止まりません。雰囲気的には悲哀感が残るラストになりそうですが、その覚悟を持って続きを読み進めたいと思っております。
京都にある珈琲店タレーランを舞台に、女性バリスタ切間美星が名探偵として事件を解決、、、ってな感じなんですが、事件というほどのものではないです。もう一人の主人公青野大和との出会いと関わる事件が主軸で、ラストの思わぬ展開には確かにびっくりさせられましたが、これも読者のミスリードを誘う手法が取り入れらていて、個人的にはそこが読後感を損ねた感がありました。あと、ちょっと全体的に粗さがあり、偉そうな感想を言わせてもらうと、もう一息かなぁという印象でした。
◆「天冥の標10 青葉よ、豊かなれPARTⅠ」/
小川一水
◆「天冥の標10 青葉よ、豊かなれPARTⅡ」/
小川一水
◆「天冥の標10 青葉よ、豊かなれPARTⅢ」/
小川一水
天冥シリーズの完結編です。これだけ中身の濃い物語を約10年に渡り、全くクオリティを落とさずに発表してきたことに驚きと共に敬意を表したいと思います。そのスケールの大きさに圧倒されっぱなしでしたが、読み続けることができて本当に幸せでした。ヒトとは?世界とは?命とは?などなど、全編通して込められたメッセージは感動的であり、できれば多くの人に読んでほしいと思える本でした。
舞台は架空の世界となっておりますが、内容は大震災を扱ったものです。大地震により壊滅的な被害を受けた国が、主人公ランカベリーを通してどうやって復活していくかという物語なのですが、これだけだとなぜファンタジー設定で描く必要があるのかわかりませんでした。特に1巻だけを読むとそうなってしまうのですが、地震が発生した理由、2度目の地震を防ぐくことができるのかが最終巻で描かれ、なるほどと納得できましたね。そういった意味では、未曾有の危機的状況における人間模様とSF的な舞台設定の両方が楽しめる作品です。
(続く)