Walking backstreet(裏道を歩いていこう)

Walking backstreet(裏道を歩いて行こう)

40代後半になっても自分の生き方、進む道が分からない男のブログです。「40にしても惑う」人間の悩みや日常の思考などを趣味も交えて書いています。

その女アレックス/ピエール・ルメートル

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凄い本を読んだなっていう感想。
 
海外のミステリー小説なんですが、ラストの展開に驚きでありました。
 
ネタバレありです。
 
未読の人はこの記事に限らず、絶対にネタバレする前に本を読んだ方が良いです。
 
そのぐらい後半の展開が面白い。
 
あらすじ
レックスという名前の女(30歳)は、異性を惹きつけるほどの容姿を持っているにも関わらず、本人はコンプレックスの塊でもあります。
 
自分の人生に何の期待もしておらず、ウィッグを付けて別人のような気分に浸ったり、カフェで美味しい食事をしたり、贅沢な買い物をしたりするのが楽しみと感じている。
 
しかしある時、彼女は何者かに誘拐され、真っ暗な倉庫に監禁されてしまうのです。
 
薄れゆく意識の中で、彼女は今はまだ死ぬわけにはいかない、やるべきことが済むまではと思いながら何とかそこから逃げだそうとします。
 
果たして彼女の運命は…
 
想像を超える展開
あらすじで紹介した部分だけだと、変質者が容姿端麗なアレックスを監禁して下世話な行為に及ぶアダルト小説じゃないかと思ってしまいます。
 
僕も実際に読みながら、そういう展開を期待してしまいました(^^ゞ
 
まあ、監禁猥褻ものではさすがにないだろうとは思いましたが、アレックスがどうやってそこから脱出するかの物語なのかなという予想でしたね。
 
しかし、それは前半部分で早くも裏切られます。
 
レックスは何とか監禁場所から逃げ出し、犯人は警察に追われ事故死してしまうのです。
 
え?なに?
 
これから、いったい何がどうなるの?という疑問が湧くのですが、本筋はここからなんですよねぇ。
 
レックスという女はそもそも何者なのか?
 
彼女がまだ死ぬわけにはいかないというのは何故か?
 
彼女の計画とは何か?
 
彼女は何故逃げ出した後、警察に助けを求めなかったのか?
 
そう、ここからなのです、物語の核心は。
 
レックスとカミーユ
レックス誘拐事件を担当するのがカミーユという刑事。
 
カミーユは、自分の妻が誘拐され、その時に身ごもっていた子供とも惨殺された過去を持っています。
 
妻と子供を救えなかった彼は、それ以降病んでしまい、何とか現場復帰したものの班を率いて事件にあたるということをしなくなっていました。
 
しかし、今回は上司の命令もあり嫌々ながら捜査することに。
 
誰か女性が誘拐されたらしい、という目撃者の証言のみで捜査が始まり、いったい誰が誘拐されたのかすら判明しないまま、誘拐犯を追っていきます。
 
それに対し、監禁状態から抜け出したアレックスは、その後、次々と猟奇的に人を殺していきます。
 
意識がある状態にまで相手を弱らせ、口から濃縮塩酸を流し込み痛みと恐怖を与えながら死なせるのです。
 
殺す相手もまるで行き当たりばったりで選んでいるように思え、頭のおかしい女殺人鬼を傷心の中年刑事が追い詰めるという話しかと思ってしまいます。
 
しかしながら、アレックスの殺人行為には意味があり、その意図を悟った刑事カミーユのラストの行動には度肝を抜かれました。
 
こんな展開で幕を閉じるなんて、、。
 
でも、読んでる方もアレックスに肩入れしてしまうので、変な正義感による決着じゃなくて良かったとも思うんですよね。
 
女性として、そして人間としての尊厳を喪失したアレックスと、妻を助けられなかったことで傷ついているカミーユの再生が対比的に描かれているのがミソです。
 

まとめ

読んでいて、アレックスが幼少期に何らかの虐待を受けていたのではないかという予感は、僕に限らず割と多くの人が抱いたことだと思います。
 
しかし、アレックスが受けた悲惨な過去は、我々読者の想像をはるかに上回るものであり、そこのところの記述は、読むのが非常に辛く気持ち悪くなります。
 
そういった意味では、決して万人にオススメできる作品ではないと思いますが、それでもラストの驚きの展開まで辿り着くと、読んで良かったと思えるのです。
 
ただ、アレックスがこの世に生まれてきた意味が何であるかを思うと、やはり悲しくなりますし、現実の世界でもこうした悲劇が起こっているとしたら、この世界に神なんかいるはずもないと思っちゃいますね。