マルドゥック・スクランブル(The 1st Compres)完全版/冲方丁
攻殻機動隊の世界観に近いかなぁ、というのが読んでの第一印象。
冲方丁氏の本は今まで読んだことがなく、たまにTVとかに出てるのを見て知っているぐらいで、その時の感想は「スカしたやつだなぁ」って(^^ゞ
ファンのみなさん、ごめんなさい。
ですが、この本は面白かったです。
けっこうバイオレンスな描写も含まれており、それ系が苦手な人にはしんどい作品かもしれません。
物語は近未来の世界が舞台。
身寄りも無く、体を売って生きていくしかない15歳の少女娼婦バロットが、雇われていた主人シェルに焼き殺されそうになるのですが、シェルを追っていた委任事件担当捜査官であり万能兵器でもあるネズミのウフコックによって九死に一生を得ます。
少女バロットは、その世界におけるマルドゥック・スクランブル09条という法律に基づき、現在では禁じられている最新科学技術を使って生まれ変わりました。
体全体を人工皮膚で覆い、高度な電子干渉技術の能力を持つことになった少女バロットは、ウフコック達と共にシェルを追い詰めようとするのですが、シェルも同じ委任事件担当捜査官であるボイルドを雇い、バロット達に対抗します。
また、シェルに雇われているボイルドは、ウフコックのかつての相棒でもありました。。
という感じで、かつての相棒と戦うウフコックと、死んだと思っていたのに驚異的な能力を身につけて生き返った少女バロットのコンビが、ボイルドと対峙するところまでがこの本では描かれています。
過酷な家庭環境に育ち、15歳という若さなのに娼婦として生きなければならなかったバロットにとって、生きる理由を見つけることができません。
生きる理由が見つからないのですから、ましてや自分を殺そうとした相手とはいえ、シェル達と戦う意味さえ見つけられないのです。
バロットのそうした葛藤の様子が上手く描かれており、この手の小説にしては実に上手く書けているなぁと感心しました。
後半、バロットを消そうとするボイルド達との戦闘の描写は、なかなか圧巻です。
彼女が身につけた能力がどれほど凄いのか、しかしながら、それをもってしてもなお、強固な壁として立ちはだかるボイルドの圧倒的強さ。
また、事件の発端であるシェルを、単純なサイコキャラとはせずに、それなりの過去と味付けをしているところも、物語に深みを持たせているように思います。
今回読んだのはこの1stで、3rdで完結となるらしく、まだ未読。
早く続きが読みたい、できれば劇場版アニメも観たいと切に願う作品に出会えました。