しあわせのパン
けっこうなファンタジー感が漂う作品でした。
悪くはない、けどあまりにファンタジー過ぎない?っていうのが正直な感想。
東京から北海道の月浦に移り住んだ夫婦は、湖の見える場所で宿泊もできるカフェを営んでいます。
美味しそうなパンと珈琲、数々の料理。
作中、かなり意図的に料理のカット割りが、写真集のような感じで挿入されており、そっち系の女性は確かに喜びそうな感じですね。
物語は季節の変動と共に主として3つのエピソードで構成されています。
沖縄旅行を彼氏にドタキャンされたギャルっぽい女の子が滞在するお話、離婚して二人暮らしとなった幼い娘と父の親子のお話、死ぬつもりでやってきた老夫婦のお話となっており、それぞれがここのカフェで美味しい物を食べて癒やされるというものです。
もちろん、心のこもった料理を食べる事で癒やされるというのも、それはそれで一種のファンタジーなんでしょうけど、個人的にはそういう考えは嫌いじゃないです。
絵画や音楽、映画、文学など、人間の心に寄り添い働きかけるものは色々ありますが、料理も同じ次元で考える事は間違ってないと思うんですよね。
タイトルが「しあわせのパン」とあるように、例えパン一つであっても、それが人を癒す事は可能なのです。
しかしながら、原田知世が演じる女性が父親の死で傷ついた心を癒やすため、北海道の田舎でカフェ民宿を営むという主人公夫婦の設定が共感できない。
美しい景色、素朴さ、ほっこり、そういったキーワードを画にする必要があったのかもしれないけど、その場所設定じゃないといけなかったのだろうか?という疑問みたいなもんですかね。
田舎でカフェでもやれば、心も癒やされ楽しく生きていける、という安直な匂いがね嫌なんですよ。
東京だろうが北海道の田舎だろうが、各々にストレスや面倒なこと、疲れさす事は色々あるわけで、要はどの種のストレスに対応できて、どれに我慢出来ないかというのは人それぞれだと僕は感じます。
「都会暮らし✕ 、田舎、自然万歳!」みたいなステレオタイプの印象がちょっと強くて、そこがファンタジー強めで描かれているものですから、今ひとつ共感できないんでしょうね。
もう、なんつぅかね、「自然豊かな田舎でのんびりカフェでもやりたい」という痛い人達を増殖させてしまやしないかと不安になります。
でも、最初にも書いているように、決して悪い映画じゃないです。
離婚で母親がいなくなった父娘のエピソード部分とか、ちょっとウルっとしてしまいましたし。
この手の映画って、作り方が難しいんでしょうね。
ファンタジー過ぎるとお花畑満載の作品になっちゃうし、ファンタジー削り過ぎるとリアル丸出しの癒され感ゼロになっちゃうしで。
要はバランスなんでしょうけど。
そういう意味では、まだ「かもめ食堂」の方が秀でているのかなぁ。
原田知世がカフェで珈琲入れている姿見て、ブレンディか?って思った人けっこう多いはず。
あと、カフェのお客さん役で出演していたあがた森魚の演技がひどすぎる。
役者じゃないから仕方ないのかもしれないけど。