自分には、ややお堅い感じの内容でした。
ですが、ヴェネツィアに暮らす人々の日常や空気感が伝わってきます。
どうしても、観光都市としての視点でヴェネツィアという都市を観てしまいますので、そこで暮らすということはどういうことか、実際に生活してみた著者の文章で理解することができます。
また、16世紀頃に日本からヴェネツィアへ派遣された少年使節団が当時、イタリアでどのような雰囲気で迎えられたかが、詳細に描かれており、歴史好きのツボを刺激する事も忘れていません。
内容は各テーマ毎に分かれていて、ゴンドラが左右対称じゃない事について、トイレ事情から美術、絵画にいたるまで実に幅広いのであります。
僕自身は芸術方面に疎いので、音楽や絵画の章ではやっぱり退屈してしまったのですが、町の下水処理や観光客も訪れない島々の話しなどは、興味深く読めました。
単純に、すげぇ知識、博学だなと驚かされ、世の中こんな人が実際にいるわけだから、文章で僕なんかがかなうわけないという事実を突きつけられた本でもあるのですが、叙情的な印象風景でしか思い浮かべられなかったヴェネツィアという街に、輪郭を持たせてくれた本とも言えます。