2020年に読んだ本(その1)
2020年に読んだ本の一覧とちょっとした感想を晒しておきます。
2021年も既に2月に入ってからの回顧録は毎度のことでございますが。
総じてシリーズものを多く読んでいた感じです。
やっぱり続きが気になるお話しが好きなのであります。
でも、続きが気になるのに、続編が手に入らないというもどかしさもありますが。
特に冲方丁氏の作品はブックオフではなかなか見つからないです。
Amazonで買えばいいとは思うのですが、なんかそれをしたら負けのような気もして。。
ということで以下、読書記録とその簡単な感想です。
「8の殺人」/我孫子武丸
我孫子氏の作品はこれが初読み。ライトな文章で読みやすかったけど、「8の数字の形をした館で起こった密室殺人」という設定は、なんというか昭和チックな感じで古めかしささえ感じました。読後は時間経過とと共に印象が薄れ、なんとなく面白かったという記憶しか残らなかったです。
「散歩のススメ」/泉麻人
泉麻人氏のライフワークである街歩きの捉え方が、割と自分にもマッチしていて好きです。特に80~90年代の東京の街の雰囲気が伝わってくるのが嬉しい。
「地下鉄の友」/泉麻人
自分も東京に行った時は、街歩きと電車はセットになっていて、各路線ごとの空気感を味わうのも醍醐味。そういうこともあって読んでみたのですが、これは実際に東京に住んで地下鉄を利用している人じゃないとこの面白さはわからないかもなという感想。
「狐笛のかなた」/上橋菜穂子
日本ファンタジーの巨匠、上橋先生の作品。上橋先生の凄いところは、架空の世界設定であっても、その情景が頭の中に浮かべながら読めるところ。難しい文章というわけでもなく、情景描写が長ったらしくもなく、それでいて世界観がはっきりとわかるのは凄いです。そして、読みながら野火と小夜を見守っている自分に途中で気付くのです。
「守り人」シリーズの1作目。「精霊の守り人」はドラマ化やアニメ化されておりますので、知っている人も多いでしょう。精霊の卵を宿してしまった為に命を狙われる身となった皇子チャグムと、彼を守る女用心棒バルサの物語。二人の成長物語でもあり、冒険ものとしても優れている読み物です。
「闇の守り人」/上橋菜穂子
「精霊の~」の続きとなりますが、ここでは、女用心棒バルサの過去や生い立ちが明らかにされます。故郷のカンバルへ25年ぶりに帰還したものの、彼女と彼女の養父を巻き込んだ王の陰謀は、養父ジグロが悪者として汚名をきせられていました。前作もそうですが、国と権力の腐敗過程が見事に描写されていて、神話との絡め方も本当に上手いです。
「夢の守り人」/上橋菜穂子
「闇の~」の続きです。今回はバルサの幼馴染であるタンダが、異界の花に囚われ人鬼と化してしまい、彼を救うために奔走する話し。タンダの師匠である呪術師トロガイの過去が語られるなど、シリーズが進むごとに、主要人物の背景が明かされてくるのも楽しい。個人的には、バルサ、タンダ、トロガイが揃った時の安心感がたまらないです。
「虚空の旅人」/上橋菜穂子
「夢の~」の続編ですが、今回の主役は第1作「精霊の守り人」でバルサから命を救ってもらった皇子チャグム。冒険要素が薄れていて、バルサも登場しないところが少し寂しい。しかし、立派になったチャグムの活躍が、自分の子供の成長を見てるようで嬉しくなります。
「ストーム・ブリング・ワールド1」/冲方丁
元ネタはゲームらしいですが、知らなくても全然楽しめました。なので、割と細かな設定まで描写がきちんとされています。この手の異世界ものは、冲方氏の本領発揮処でもありますので、安心して読んでいられます。最後の顛末には驚かされましたが、こうなると早く続きが読みたくてしょうがないです。
「微睡みのセフィロト」/冲方丁
これも冲方氏の真骨頂的な作品。ほぼマルドゥックの世界観ですので、それが好きな人であれば間違いなくはまると思います。サイキックの戦いを描いておりますが、おじさん捜査官と謎の美少女ラファエルのコンビが、殺伐とさせない空気を作り出しているのもグッドです。
「犯罪者(上)」/太田愛
「犯罪者(下)」/太田愛
太田愛氏の作品はこれが初読。脚本家でドラマ「相棒」も担当していたということで、これを読むとなんとなく相棒の雰囲気もあるなと感じました。無差別通り魔事件で生き残った修司が、病院を出た直後に襲撃される。無差別の通り魔事件だと思われていたが、実はそうではないかったのか?もう、かなりグイグイ引き込まれ、先へ先へと読み進んでしまいます。上下巻合せるとけっこうなボリュームですが、それを感じさせない面白さがありました。
ゲーム原作者が「クライン2」という仮想現実VRのゲームテストに関わることになります。しかし、テストを続けていくうちにゲーム制作会社の陰謀に巻き込まれてしまうお話し。これが発表されたのが30年前にも関わらず、まったく古めかしさがないのというのは、作者が先見の明に優れているのでしょう。仮想現実に取り込まれる物語はいくらでも転がってますので、なんとなく先の展開も検討はつくのですが、それでもラストはちょっと衝撃でした。
「時砂の王」/小川一水
「天冥の標」シリーズを読み終えてしまった今となっては、他の作品を読んでも満たされないのではないかと思っていましたが、全くの杞憂でした。邪馬台国の女王、卑弥呼の前に現れた未来からのメッセンジャーOは、宇宙からやってきた機械群ETに地球が滅ぼされてしまうのを防ぐため戦わなければならないと告げます。時間逆行と歴史ものを掛け合わせた物語ですが、決して多くは無いページ数にも関わらず、重厚な人間模様もきちんと描かれ、ラストの10万年の時を超えた戦いの結末は小川一水氏ならではスケール感で圧倒されました。
主人公は1959年生まれ久雄。地元が嫌で東京の大学に進学するも、実家の都合で中退し広告代理店でコピーライターを目指しながら奮闘する物語。主人公は僕より10歳年上になるのですが、それでも面白く読むことができました。特に80~90年代の東京の雰囲気がよく伝わり良かった。特に派手な事件が起こるわけでもなく、その時代の空気を主人公を通して淡々と文字にした感じがたまりません。作者がモデルなのかと思いましたが、どうも違うようですね。
「真夜中のマーチ」/奥田英朗
色んな事情で組んだ3人が、10億円を強奪しようとする物語。話しのテンポが小気味よく、登場する人物たちもキャラ立ちしていて面白かったです。個人的には三田物産の三田が、あまりに朴訥すぎて笑えました。