いつもの通り原作未読です。
落語が題材のアニメ作品ということで、正直どこまでその世界にはまれるか不安だったのですが、そんな不安をあっさりと消し飛ばすほどの出来映えで面白かったです。
あらすじ
刑務所の落語慰問会で見た、”昭和最後の名人”・八雲の「死神」が忘られない”与太郎”。出所後に拝み倒して、住み込みの弟子となりますが、八雲のところでは小夏という名の女性が暮らしていました。
…という感じ。
音系原作をアニメにする壁
これに限らず、例えば「BECK」など音楽を題材にした原作漫画をアニメ化や実写化する時、けっこう非難の声もありました。
原作では、誰もが魅了されるこゆきの歌声だったり、唯一無二のロックバンドとされたダイイング・ブリードが奏でる音楽は、漫画を読む読者の想像の中だからこそ成立するものでした。
それをアニメ化するということは、必然的にこゆきの歌声をリアルに出さないといけないですし、オリジナル且つ最高のロックミュージックを作品内で視聴者に届ける必要があり、普通に考えればとうていそんなことは不可能だからです。
日本のプロミュージシャンが世界でほとんど通用してないのに、そのミュージシャンが書いた曲が至高のロック音楽になりえるわけがない。
ドラゴンボールの実写化の方が、そういった点ではまだ楽だと思うのです。
このアニメも音楽ではなく落語ですが、上質の落語は喋りだけでなく演者の立ち振る舞いや動作までもが表現の対象になります。
そういった点では、アニメ化するにはかなりの壁と覚悟が必要だっただろうと想像します。
本物の落語家に演じさせるわけにもいかないでしょうから、声優達それぞれの力量だったり努力にかかってきます。
ただ、僕はそんなに落語に詳しくないので、どういうのが良くて何が駄目というのは分からないのですが、このアニメにおいては全然良かったなと感覚的に感じられました。
声優の底力
アニメはあくまで物語性だと僕は思ってますので、どの声優が好きとか、誰がいいとかはありません。
それぞれの作品の世界観をごく自然に作り上げてくれれば、僕はそれで充分満足です。
この「昭和元禄落語心中」にしても、声優さんの力量でもって評価するのはやはりもったいない。
ですが、改めてプロの声優の凄さをこのアニメでは実感することができます。
物語性はもちろん重要ですが、それを構築するキャラクター達も当然大事。
ましてや題材が落語ですからね。
ハードルは普通のアニメよりも断然高かったはずですが、見事にキャラを演じ切っておられ脱帽であります。
ある落語家の物語
落語が題材とはいえ、メインテーマは落語家の生き様です。
当然、作中には実際に落語を演じるシーンも登場しますが、落語を知らなくてもやはり楽しめます。
世界観が素晴らしい
画はちょっと特徴的というか独特です。
全体的には昭和時代のノスタルジックな風景含めて、綺麗に描かれています。
もう単純にそうした世界観に浸るためだけに視聴しても良いぐらいです。
アニメでありながらまた別の充足感
物語性や描写が素晴らしいアニメを見ると、活字の小説を読んだ後のような充足感が得られます。
このアニメはまさにその典型。
小説>アニメという意味ではなく、同じ物語を語るコンテンツでありながら、その垣根を簡単に超えてしまうレベルの作品ということです。
当然、逆のパターンもあります。
まとめ
凄く陳腐な言い回しですが、日本人で良かったなと思います。
落語も含めて、この作品で描かれる世界観や物語を享受できる、それを面白いと思えることに幸せを感じます。
あらためて、アニメってすげぇなと(^_^;