Walking backstreet(裏道を歩いていこう)

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Walking backstreet(裏道を歩いて行こう)

40代後半になっても自分の生き方、進む道が分からない男のブログです。「40にしても惑う」人間の悩みや日常の思考などを趣味も交えて書いています。

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

映画

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期待値が大きかっただけに、残念な出来映えという感じ。
 
地元松江や出雲、宍道湖、そこを走る一畑電鉄の風景が叙情たっぷりに描かれていて、行政や観光協会的には両手を挙げて喜べる作品だとは思う。
 
僕自身も、やっぱり宍道湖の風景って綺麗だなと思ったし。
 
でも、基本的に脚本がまずいというか、あまいというか。
 
タイトルはそうなってるからだろうけど、自分が想像していた中身と違ったのも大きい。
 
僕自身40代後半になって、でもやっぱり生きていくとはどういうことなんだろうかと悩みもがいている。
 
こんな人間が、この映画のタイトルを見て何を期待するかというと、同じ中高年世代がどのように決断して、49歳で電車の運転士になろうと考えたのか、そこへたどり着くまでの葛藤や悩み、49歳の人間が夢を実現するために何を捨て、何を選択したのか、といったところが描かれていると想像していたのだ。
 
勝手に想像するお前が悪い、と言われればそうだろうが、少なくとも作品タイトルはそう思われても仕方ないのではないか?
 
主人公の筒井は一流企業の管理職で、作品冒頭で次期役員の席を約束されるシーンもある。
 
最初のところでの主人公は、会社命令である不採算工場の閉鎖やリストラを首尾良くこなすが、家庭では大学生になる娘とコミュニケーションが取れず、且つ会社第一主義の人間という設定となっている。
 
よくあるキャラ像だが、こういうステレオタイプの設定はやっぱり既に古くさいし、飽き飽きしてしまう。
 
大企業で将来は役員となる予定の主人公が、その立場を捨て地元島根県に帰って電車の運転士として生きていく決断をする理由は何か?
 
一つは、工場閉鎖を行ったところの工場長が同期で、且つその工場長には余命宣告されている子供がいるのいも関わらず、その工場長が話し前半部分で交通事故死してしまった点。
 
もう一つは、島根で一人暮らしをしている母親が倒れて入院したこと。
 
もう一つが、主人公の小さい頃の夢が一畑電車の運転士になることだったという点。
 
一番目の同期社員の工場長が事故死してしまった点については、工場長との関係の描き方が非常に短時間で浅いため、観ている側にその動機が伝わってこない。
 
なので、工場長が交通事故死したことがわかっても、我々には唐突過ぎ、またその死に対して何の感情も湧いてこない。
 
その事故死というのが、物語上何の化学反応も起こしてないただのご都合主義なのに、制作側はこれで主人公が今の地位や給料を捨てる十分な理屈づけとなっていると勝手に思っているところにギャップが生じている。
 
脚本がまずいというのはこの点にある。
 
母親が倒れたことは、それ自体は大変なことだと思う。
 
だからといって、主人公が地元に帰って子供の頃の夢だった電車の運転士なろうというのは、あまりに暴力的すぎる。
 
作品の冒頭で、あれだけ家庭を顧みない会社人間の主人公が、本当に突然に運転士募集に応募してみると娘に吐露する場面が違和感ありありなのだ。
 
そして、いつの間にか180度逆のキャラに変わってしまうところも同じである。
 
主人公の奥さんも、旦那が勝手に仕事を辞めて田舎に引っ込んでしまうにも関わらず、ほとんど出演シーンもないまま許してしまう。
 
娘もいつの間にかジブリに出てくる女の子みたいなのに変わっている。
 
でも、電車が走る田舎風景はこれでもかと言わんばかりに美しく映されている。
 
反東京、反都会、田舎は素晴らしい、これがこの映画の核でありメッセージである。
 
都会ではギスギスしていた家庭も、田舎にくると修復できるみたいな。
 
ここで言ってしまうと、この映画は主人公が電車の運転士になる物語ではなく、主人公も含めた家族を修繕しようとする物語である。
 
だから、主人公がどのように運転士になっていったかではなく、どのように家族が田舎で綻びを繕うことができたかたという作品である。
 
つまり、電車の運転士というのに必然性が無く、運転士以外でも成立する映画なのだ。
 
僕がタイトルに騙された感があるのもここにあると思う。
 
田舎の生活は素晴らしいと思いたいヒトの映画が、この作品ではないだろうか。
 
そういう点ではファンタジーである。
 
しかし、実際の田舎もけっこうギスギスしているし、おぞましい部分はふんだんにある。
 
そういうマイナスなところは一切この映画では描かれていない。
 
田舎が本当に素晴らしいところだったら、東京に地方からあんなに人は集まらないし発展もしない。
 
地元の人間の大半は手放しでこの映画を褒めると思うが、僕は正直な気持ち、残念な映画という感想でしかなかった。
 
ただ、鉄道好きという視点から見たら、けっこう楽しめる。