夏色キセキ
あらすじ
伊豆の下田が舞台。
夏海、紗季、優香、凛子の女子中学生4人を中心に描かれる、ひと夏の不思議な奇跡体験のお話です。
基本的には、夏休み中の不思議なエピソードが各話で展開されるという作り。
夏海と紗季は家が隣同士の幼馴染みですが、紗季が夏休み終わりに転校する事がわかり、2人の関係がぎくしゃくするところから物語がスタート。
2人の仲を元に戻すため、優香と凛子は、昔みんなでアイドルになろうって4人で頑張っていた頃を思い出させようと、神社の奥にある御石様のところに集まります。
御石様の周りで4人が手を繋ぎ、昔の事を思い出していた時、なんと4人の体が宙に浮き出し、空高く舞い上がったのです。
御石様による不思議な力と、4人の少女達の夏休みの日常、そして紗季に転校して欲しくないという願いは叶うのか?
突拍子の無いファンタジーアニメ…じゃなかった
最初のところで、御石様の不思議な力で4人が空を飛ぶシーンが描かれ、さすがにその時点ではけっこうぶっ飛んだファンタジーアニメなのかなとも思いました。
しかし、話しが進むにつれ、実に丁寧に作られた日常系のアニメであることがわかってきます。
願掛けをすると実際に叶う御石様の不思議な力も、作品を通してずっと出てくるのですが、そればかりが
際立っているわけでなく、良い感じのアクセントとして使われております。
結果、全体を通してちょっと不思議だけど、でも4人の少女達の大切な日常がしっかりと伝わるアニメでした。
自然な会話や最小限に押さえたセリフとか
キャラ4人の性格が上手く描かれているのですが、それが妙に説明っぽくなく、かといって過剰に演じさせてみたりという事でもなく、何気ない表情やしぐさによってそれぞれの人間性を上手に演出しています。
非常に良質な、日常系映画を観ているような雰囲気もあります。
御石様は基本的に問題解決はしてくれない
この作品の面白さというか、妙に見入ってしまう一因でしょうかね。
4人を空に飛ばしたり、夏海と紗季を磁石のように引っ付けたり、4人の人格をそれぞれ入れ替えたりなど、御石様の不思議な力で色んな現象が願掛けによって起こります。
それによって巻き起こる騒動も面白いのですが、何よりもこのことで直接的に問題が解決されているわけではないという事実。
御石様は、いつも願いを実現してくれるわけではありません。
それは作中でも、4人が何故だろうって悩むシーンがあるのですが何かの条件が揃った時に願掛けが叶い、不思議な現象は何かが達成させられた時点で解かれます。
ですが、そういう現象が起こった事と、問題の直接解決は別のところというのが、作品の面白さでもあります。
これが単純に御石様が少女達の願いを次々と叶えるみたいなストーリーだったら、凡クラスのアニメだったでしょう。
ラストに繰り返される最後の1日
やっぱり、最後の展開が肝ですね。
紗季の転校先となる離島をみんなで旅する話しを事前に入れており、ラストへの伏線もばっちり不自然なく描かれています。
アイドルのオーディションに合格するまでその日を繰り返す事が、それは4人が永遠に一緒にいられると事とイコールである事に気付き、夏休みが終わらなければいいという願いが、御石様によって叶えられます。
ひたすらループする夏休みの1日。
オーディションにも行かず、海や山へ一緒に遊びに繰り出す毎日。
しかし、ここで彼女達は気付きます。
いつまでもこのままじゃいけない、夏休みを止めるにはどうしたらいいのだろう?
その為には全てを終わりにしなければならない、御石様のキセキとさよならする必要がある。
この終わらない夏休みのキセキが無くなれば、紗季は転校してしまう。
でも「終わらないものは思い出になってくれない。だから最高の思い出にしたいの。だからさよならするの。」
名言ですね。
思わず涙が出そうになりました。
未来へ向かうとは、こういう事なんだなって改めて思いました。
なんかね、せつなくもあるし懐かしい気持ちにさせられるものもあるし、ほんわかする気持ちにもなったりで、本当に良い作品だったなぁと。
まとめ
実は一番驚いたのは、制作会社名に「サンライズ」がクレジットされていたこと。
こんなアニメも作るんだって、ちょっとびっくりしましたね。
変にヘタレなアニメだったら、まあ、サンライズだししょうがないかなとも思ったでしょうが、実際には非常に素晴らしい作品に仕上がっており賞賛に値します。
普通だったら、続編が見たいとかという感想になるんですが、この作品に関してはそれとは全く逆でして、この12話に全て凝縮されている宝箱のようなアニメでありました。