竹中直人氏の得意なキャラが活かされた映画でしたね。
ストーリーは、主人公である中年男、藤岡徹(竹中直人)が胆石で入院したのですが、退院の時に主治医が話す末期ガンの言葉を立ち聞きし、自分がガンで余命半年であると思い込みます。
退院時に家族がしきりに彼の事をいたわってくれる事から、ガンであることを強く確信した主人公は、残りの人生を学生時代に熱中していたバンド活動で締めくくろうと行動を起こすのです。
高校時代に組んでいたバンド「シーラカンズ」のメンバーで、今でも交流のある酒屋の栗田(ベース)、不動産屋の渡辺(キーボード)に自身の病気を告白、バンド再結成を持ちかけます。
その2人は快く再結成の話しを受けてくれましたが、ギターの山本は仕事一筋の人間となっており、なかなか首を縦に振ってくれなかったのですが、主人公の熱意に押され了承することに。
ドラムはアメリカ在住ということで助っ人を募集、応募してきたのが資産家の日暮。
全員揃ったところで練習を開始、紆余曲折はありましたが最終目標の親父バンドコンテストに出場することが決まるのでした。
というストーリーなんですが、ドラムの日暮さんは稲垣潤一で、なかなかの演技を見せてくれます(^^ゞ
主人公がガンである事を勘違いし、話しが展開するというのはよくあるパターンですが、ここでは勘違いする主人公のおっちょこちょいぶりのユーモアと、実は主治医の話はギターの山本の事だったという衝撃と悲哀が入り交じっていて、それをバランス良く上手に描いています。
もともとギターの山本は、主人公藤岡が自分と同じガンであるにも関わらず、残りの人生を前向きに生きようとしている姿に励まされ、もう一度ギターを弾いてみようと思い立ったのであります。
この辺は、非常にしっくりくる設定で、且つ、彼らがバンド活動をする理由に大きな動機付けをしています。
また、登場するメンバー達は、主人公と同じように中年であり、仕事と生活に追われくたびれてしまっています。
ギターの山本も、バリバリの管理職サラリーマンですが、やはりそれなりにハードな仕事をこなし、家庭での子供との関係が微妙な雰囲気になっているという悩みも。
唯一、そういった悩みがなさそうなのが、募集でやってきた資産家の日暮。
都内一等地にスタジオを持ち、バンドメンバーの為に自由に使わせるのですが、それが何の悩みもない金持ちというやっかみをバンド内で受け、ケンカも勃発します。
このあたりの細かい設定がきちんとしているおかげで、映画全体として非常に心地よく観賞できるのだと思います。
ギターの山本が自身の病気とバンド活動を通し、家族、仲間、活きる意味を取り戻していく描写が良くできていて、思わず涙してしまいます。
ラストの披露宴での演奏を、山本が車椅子に乗って家族と一緒に見ている終わりもジーンと来ましたね。
僕自身もバンドやってるんで、演奏していてメンバーと息が合った時の高揚感や楽しさはよくわかりますし、そういったシーンも良い感じに仕上げてありました。
アマチュアっぽい雰囲気を匂わせる曲作りもできるなんて、さすがは奥田民生だなぁって感心♪
演奏も俳優が実際にやっているとのことで、それもよりリアリティーを持たせています。
ちなみに、
ギター:宅麻伸
ベース:段田安則
キーボード:斉藤曉
ギター(ラスト):柏原収史
俳優の柏原が弾くギターもけっこう良い、というか非常に上手いです。
バンドやってると、どうしてもそういう目線で見ちゃうんですよね。
非常に良い映画でした。