Walking backstreet(裏道を歩いていこう)

Walking backstreet(裏道を歩いて行こう)

40代後半になっても自分の生き方、進む道が分からない男のブログです。「40にしても惑う」人間の悩みや日常の思考などを趣味も交えて書いています。

誰か-Somebody/宮部みゆき

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読み終わった時は、なんだかふわっとした感だけだったのを覚えています。
 
非常に、淡々としている感じの小説とでも言いましょうか。
 
主人公の杉村三郎は、義父が創業者であり会長でもある今多コンツェルンの広報室に勤めています。
 
義父の娘と結婚した事により、それまで勤めていた出版社を辞め転職し義父の会社へ入社したのです。
 
ある時、会長である義父の運転手をしていた梶田氏が、自転車による轢き逃げ事故で死亡します。
 
犯人が捕まらない中、梶田氏の娘2人が父親についての本を出したいので相談に乗ってやって欲しいと会長から指示されます。
 
主人公は出版するために娘達2人に会うのですが、どうも、本を出したいと熱心になっているのは妹の方で、姉はできれば出版をしたくない様子に気付きます。
 
梶田氏を轢き逃げした犯人は誰なのか?という軸と、梶田氏の過去、その娘姉妹達の確執みたいなものがもう一つの軸となり物語は進んでいくのです。
 
主人公の性格や言動、考え方には非常に好感が持てるというか、すごく出来た人物だなぁと感じます。
 
その奥さんや、コンツェルン会長でもある義父についても、どちらかというと好感が持てます。
 
だからというわけではないんですが、物語自体が淡々とした主人公やその家族視点で進んでいくので、読み終わった時に強烈なインパクトが残らなかったのかなぁと思いました。
 
もちろん、ラストはそれなりにドロッとした黒い雰囲気も醸し出してはいますが、まあ、そのオチは想像できないほどのものでもないわけで、そうなると、やっぱり全体としては凹凸のない小説だったという印象になりましょう。
 
特に梶田氏の娘の妹の描き方からして、こちらとしても肩入れしにくいキャラ設定になっているから、余計にラストへの動線が見えてしまっています。
 
ただ、テーマとしては犯人が誰であるかということよりも、梶田氏の過去を探っていくことで浮かび上がる家族像であり、それと対比させる形で主人公の家族に対する思いみたいなものなんだろうなと思いました。
 
たぶん、内容を思い出しにくい本ではあるなというのが総じての感想でした。