Walking backstreet(裏道を歩いていこう)

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Walking backstreet(裏道を歩いて行こう)

40代後半になっても自分の生き方、進む道が分からない男のブログです。「40にしても惑う」人間の悩みや日常の思考などを趣味も交えて書いています。

夜行観覧車/湊かなえ

Books

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代表作「告白」をすっ飛ばして、はじめて読んだ湊さんの作品がこれです。
 
彼女の作品は、どれも暗澹たる読後感が残るというのを噂で聞いていたので、それが今まで手を出さずにいた一因でもあるのですが。
 
ひばりヶ丘という、ある高級住宅街で起きた殺人事件を軸にストーリーが進みます。
 
事件の起きた高橋家は、父親が医者で子供達も有名私立高校に通う典型的なセレブ系の家庭ですが、そこで夜中に聞こえてきた悲鳴を向かいの家が聞きつけます。
 
向かいに住む遠藤家は、高級住宅街といはいうものの、幸運にも通常の半分の地基地面積で家を建てることができた中流家庭で、高校受験を失敗した娘が癇癪を起こすようになりご近所でもその騒動が聞こえるほどの家です。
 
そこに、この住宅街の古くからの住人である小島さと子という年配女性が絡んできて、それぞれの家族達の視点で物語が語られていきます。
 
殺人事件の犯人は誰かというミステリーにも思えますが、実際はそこに大きな重要性はなく、それぞれの家庭にある問題が、最終的にどう事件と関係し着地するのかというところがミソです。
 
だから、事件解決となりめでたしめでたしという本とはちょっと違うんですね。
 
それぞれの家族が抱える問題の闇は深く、読み終えても手放しで喜べる気持ちにはなりません。
 
このあたりが湊かなえワールドという事なんでしょうか。
 
遠藤家は、マイホームの執着が凄すぎる母親と事なかれ主義の父親に、高級住宅街から平凡な学校へ通うことにコンプレックスを感じ癇癪を起こす娘という設定。
 
高橋家は、一見問題がなさそうであったにも関わらず父親が家族の誰かによって殺されるという事件が起きる。
 
ひばりヶ丘の古参住人である小島さと子は、ひばりヶ丘の秩序とプライドを何よりも大事にし、そのためであれば事件のあった家に出て行けというビラを貼ることも何とも思わない人物。
 
登場する人物のほとんどがどこか壊れていて、クズの一歩手前といった感じで、読んでいるこっちも心が荒んでしまいそうになります。
 
唯一、事件のあった家族の娘の同級生姉弟がまっとうなキャラという感じ。
 
人間の悪や負の部分をデフォルメして掘り下げていけば、そうなっちゃうんでしょうけど、現実、そんなヤツにあんまり出くわした事が無い、というか、自分自身が鈍感なので気付いてないだけかもしれませんが、この作品の登場するような人間が実際に周りにいたら嫌だなぁという気持ちにさせられました。
 
タイトルの「夜行観覧車」は、物語の中で現物としては登場しませんが、小島さと子のセリフに込められた意味が集約されています。
 
「長年暮らしてみたところでも、一周回って降りたときには、同じ景色が少し変わって見えるんじゃないかしら。」