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40代後半になっても自分の生き方、進む道が分からない男のブログです。「40にしても惑う」人間の悩みや日常の思考などを趣味も交えて書いています。

農業の実情って知られてないんだろうけど

 

大西 宏のマーケティング・エッセンス : ドローンで農薬散布とか大阪にリニアって時代逆行じゃないの

この人のブログは割とわかりやすく、着眼点もハッとさせられるところもあったりして好きなんだけど、今回の記事はちょっといただけないなと感じた。


この世の理全てを知っている人はいないわけで、そういった点においては仕方無いかとも思うが、農業に関してもたまたま目に為た光景で驚き記事にしてしまうと、事情を知っている人間が読むと滑稽な論になってしまうんだなと感じた。


筆者はたまたま田んぼの近くを車で走っていたら、無人ヘリで農薬散布している場面に出くわし、ぶつかってこないか、農薬が車にかからないか不安だった、その地域で作られた農作物は絶対に買いたくないと思った、ということらしい。


その上で、ドローンの新たな利用として農薬空中散布に使う発想なんて逆に時代遅れじゃないかという論に繋げている。


僕が仕事柄知っている現状とそういうもんでもないだろうとと思う点を挙げると、
①無人ヘリでの農薬散布はどこでも行われている作業の一つにすぎない。


②必ずしも大型農家とは限らず、集落営農、地区単位でヘリ防除の計画を立て業者やJA等に依頼している。


③ヘリ防除をしていない農家や地域でも、基本はカメムシ対策用の防除は実施しており、その場合は作業者が重たいエンジン付きの散布機を背負って田んぼの中に入って散布するが、高齢者にとってはきつい作業である。


水稲に関しては、田植え前の苗への殺虫薬、田植え後の除草剤散布、中干し後のカメムシ用防除等が基本となっており、各都道府県単位における水稲栽培指針で毎年示されており、その範囲内で栽培管理が行われている。


水稲は基本的に配水の問題があるため、集落営農単位、地域別単位で水管理が実施されており、それを踏まえた品種栽培や計画で実施されるので、無農薬水田と慣例栽培水田が隣接している状況にはなりにくいが、地域によっては隣接している場合もあり得る。(自分は知らないが)


⑥筆者は無農薬栽培の圃場が近くにあったらそこも迷惑じゃないかということを書いているが、逆に無農薬栽培によって病気、害虫等の発生により慣例栽培をしている圃場に被害が拡大することを考えていない。


⑦完全無農薬、低農薬栽培のものを消費者が求める傾向にあるのは確かだが、収量が低く価格も高めになるため、一部の富裕層だけがその恩恵を受けやすく、多収量でできるだけ安価な国産米を供給する慣例栽培がこれから廃れてしまえば良いということにはならないし、批判すべきものでもない。仮に日本国民1億2千万の胃袋を国産だけでまかなおうとするなら、無農薬等の特殊栽培ではどだい無理な話。


⑧筆者はそこまで言及していないが、完全無農薬栽培が本当に美味しいのかというのは疑問。実際に慣例栽培でも充分美味しいコメは僕の地元でもけっこうあり、バカの一つ覚えみたいに無農薬であれば安全・安心・美味しいとお題目を唱える風潮に嫌気が差す。(何が何でも安保反対と唱える人達と思考回路が似ている)


まあ、思いつくところではこんな感じ。


で、ドローンを農薬散布に利用することが時代に逆行しているのか?という論だけど、ヘリより安価で操縦も簡単ということであれば、農家や集落にとっては非常にメリットが大きいわけで、逆行している云々を議論するような事じゃないのではないか?


今時、農薬をたくさん使う農家なんて逆にほとんどないと思う。


だって、農薬ってすごく値段が張るから、できるだけ農家は使いたくない、けど、必要最小限でも使っておかないと、草取りや害虫対策で最終的にしんどい思いをするから使うだけのこと。


まあ、そういう事情を誰でも知っているわけではないだろうし、それも固定観念の一つだろと言われればそうなんだけど、あまり表面的に見過ぎている感がしたので自分の考えを書いてみた。


ただ、大西宏氏が過去記事で書いているTPPや食料自給率の話しなんかは、非常に面白く且つ腑に落ちる論であるだけに、今回はちょっと個人的には残念。